「五条楽園って」其の伍
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32 ) 熟れた芸妓.
[2004/02/09(月) 23:35]
そんな私の願いが通じたのか、12月の最初に、明らかに彼だと分かるカキコがこの板に書かれていました。「ああ、彼は今でも私のことを想ってくれている」彼の書いた文章を読んだときは、この胸が張り裂けそうでした。私は、急いで掲示板に、「あなたのことを待ち続けています。一日も早く来てください」と書こうとしました。でも、書けなかったのです。夏に感じた葛藤がまた甦ったのです。私は娼婦だ、と云う葛藤です。
 しばらくすると、彼は斬九朗を他の人と勘違いしている様子がこの掲示板から伺えました。このままでは、私の優柔不断によって、他の人にまで迷惑が掛かってしまう。私は意を決しました。「もう待っているのではなく、私が神戸に行って彼を捜して、この気持ちを打ち明けよう」
 次のお休みの日に、私は阪急電車に乗って神戸へと向かいました。彼は神戸の出身で、今は京都に住んでいるとしても実家は神戸にあるはず。実家が分かれば何とか連絡の方法はある。そう考えたのです。彼の名字を頼りに電話帳をめくればいい。彼の名字はありきたりな名字ではないので、都会と雖もそんなに数はないはず。そして、阪急三宮駅を降りて、近くの電話ボックスに入り、電話帳に記載されている彼の名字の電話番号を全てメモし、傍の喫茶店から一軒一軒電話したのです。幸運にも、彼の実家はすぐに見つかりました。彼のお母さんと思われる方が電話口に出られ、私は咄嗟に嘘を吐きました。以前、彼の出た大学名を聞いていたので、その大学の事務局を名乗り、「同窓会のご案内を送らせていただきたいので、現住所をお教え願えませんか」と事務的に言ったのです。彼のお母さんは、彼が京都ではなく、今は神戸に住んでいることを教えてくれました。私は、言われた住所をメモし、本屋さんを探し、そこで神戸の地図を買いました。そして、彼の住んでいるマンションへと向かったのです。

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管理者:KFJ
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